たまひよ

新生児集中治療室(NICU)に入院した赤ちゃんの治療や、その成長や家族のかかわりについて、専門家に聞く不定期連載。テレビドラマ『コウノドリ』(2015年、2017年)でも監修を務めた神奈川県立こども医療センター(以下、神奈川こども)周産期医療センター長の豊島勝昭先生に話を聞きます。
ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックにカーリング女子日本代表選手として出場した小谷優奈選手は、今から27年ほど前に神奈川こどもNICUに入院し、先天性心疾患の1つである「純型肺動脈閉鎖症」の治療をしています。
第17回は、先天性心疾患がある赤ちゃんの治療や成長についてです。



――今回は、先天性の心疾患がある赤ちゃんのエピソードについて教えてください。

豊島先生(以下敬称略) 今年2月に開催されたミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックに出場した、カーリング女子日本代表の小谷優奈選手は、神奈川こどもNICUの卒業生です。27年前、小谷選手は先天性の「純型肺動脈閉鎖症(じゅんけいはいどうみゃくへいさしょう )」という、心臓の難病がありました。

当時は現在のように胎児診断で心臓病が見つかる時代ではありませんでした。小谷選手の病気は胎児のときにはわからず、生まれてすぐに具合が悪くなって、病気があることがわかり、神奈川こどもに搬送されました。

――純型肺動脈閉鎖症とはどんな病気ですか?

豊島 肺動脈閉鎖症とは、心臓の右心室から肺へ向かう通り道である肺動脈が生まれつきふさがっている状態です。その中でも心室中隔欠損などのほかの心臓病がない場合に「純型肺動脈閉鎖症」と呼ぶことがあります。肺へ血液を送る心臓の出口が閉じているので生まれてすぐに酸素が不足し、チアノーゼで全身の皮膚色が紫色になります。出生1万人あたり0.4人~0.8人程度という非常にまれな病気です。

胎児はへその緒を通して母親の胎盤から酸素と栄養をもらうので肺呼吸をしていません。そのため、胎児期には、肺へ向かう血液を胎盤へ流れやすくする「動脈管」という血管があります。動脈管は生まれると1日以内に閉じます。
肺動脈閉鎖症では、心臓から肺へ血液を送る肺動脈がふさがっています。そのため生まれてすぐの時期は、まだ閉じていない動脈管が、肺に血液を届ける命綱の役割を果たします。
動脈管が閉じてしまうと肺に血液が完全に流れなくなり、命にかかわります。肺への血流を確保するために動脈管を開け続けておく薬(プロスタグランジン)による点滴治療を行います。

小谷選手は生後11日目のときに、閉鎖している肺動脈を広げるカテーテル治療を行いました。小谷選手の肺動脈閉鎖の症状は重く、低酸素状態でした。ぐったりして力が弱く、場合によっては脳がダメージを受けている可能性もある状況です。担当医からは「病気がない子たちと同じように勉強や運動はできないかもしれない」と、厳しい内容の説明もしていました。

神奈川こどもの医療チームは、なんとかしたいという思いで、NICUだけでなく、手術室、術後管理する小児集中治療室(PICU)へと移りながら新生児科、小児専門の循環器科、心臓外科、麻酔科、集中治療科に関わる多職種の医療スタッフが連携して治療にあたり、生後3カ月のときに退院して自宅に帰ることができました。


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