たまひよ

東京都内に家族6人で暮らす山下まやさんは、19歳の双子、10歳の三男、5歳の長女の母親です。長男の順一朗さんと二男の宗一郎さんは医学部生でありながら、ピアニスト『兄ーズ』としても活躍中。三男の弘一郎くんは生後2カ月で指定難病の「大田原症候群」と診断されました。医療的ケアが必要な弘一郎くんの子育てのことを中心に、まやさんに家族のことについて聞きました。全2回のインタビューの後編です。


24時間医療的ケアをする生活も9年目に



弘一郎くんが生まれながらもっている病気、大田原症候群は、新生児期から生後3カ月以内に発症する重症のてんかん性脳症です。治療が難しく発達が遅れる病気で、患者数は日本全体で500人未満と推測されています。生後すぐから入院していた弘一郎くんが、退院したのは1歳直前のこと。それからは、自宅で24時間の医療的ケアをする生活が続いています。

「弘一郎に必要な医療的ケアは、気管切開をした人工呼吸器の管理と、たんや鼻水の吸引です。症例数が少ない大田原症候群のなかでも、弘一郎のように自発呼吸が難しく呼吸器をつけている例はほとんどないようです。
乳児期は数秒ごとに、1日に何百回ものてんかん発作がありました。現在は対症療法の投薬などによりだいぶ改善して、大きな発作が1日に2〜3回にまで減っています」(まやさん)

弘一郎くんは、朝・昼・晩の食事と寝る前の水分や、薬などは胃ろうでとっています。

「食事は弘一郎用にミキサー食を作り置きして冷凍しておいたものを、解凍して食べさせています。食事は和食や中華料理や、ときには頑張ってフランス料理を作ることもあります。というのも、私は家にいる時間が長く、外食などもほとんどできないので食べたいものは全部自分で作る必要があったから、いろんな料理にチャレンジしてきたんです。三國シェフの本のレシピを見て料理して『うまい!』『私、天才!』なんて言いながら食べています(笑)」(まやさん)

弘一郎くんの日中のお世話は、訪問看護師やヘルパーのサポートがありますが、夜間のケアはずっとまやさんが行ってきました。

「私は何かあったらすぐに動けるように、弘一郎のベッドの半径2メートル以内に寝ています。夜は、鼻詰まり、酸素低下、呼吸器がはずれるなど、さまざまなアラームが鳴るので、こま切れ睡眠になることが多いです。

その生活も10年目になって慣れてきたこともあり、アラームが鳴る前に『呼吸の音がおかしいぞ』と気づいて起きることもあります。弘一郎は比較的よく眠る子なので私も休めているんですが、体調を崩すと、30分おきなど頻繁にアラームが鳴り、まとまった睡眠が取れない日もあります」(まやさん)

24時間の医療的ケアと、こま切れ睡眠、さらにほかのきょうだいの子育てという多忙な生活を送るまやさん。とくに大変なことはどのようなことなのでしょうか。

「ほとんどのことに慣れてしまって、何が大変なのかわからないほど弘一郎のケアは生活の一部になっていますね。ただ、通院などのための外出や家族での旅行などは、事前の入念な調査や準備をしなくてはいけないので、ちょっと大変かも。車いすが入れるか、段差はないかなど調べる必要があります。
だから日常でも『おなかすいたね、ちょっと食べに行こうか』というようなことはできません。

日中はワンオペになることが多く、以前は私がちょっとコンビニに買い物に行くことも難しかったですが、兄たちが大学生になって弘一郎を見てくれるようになったので、私も外出できる機会が増えてありがたいです」(まやさん)


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