たまひよ

元気だった赤ちゃんが睡眠中に突然、亡くなる乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)という病気があります。SIDSの原因はいまだに不明です。
こども家庭庁は、毎年11月を乳幼児突然死症候群(SIDS)の対策強化月間と定めて予防の啓発活動を行っています。子どもの事故に詳しい、小児科医 山中龍宏先生に、最新のSIDS情報と予防について聞きました。


うつぶせ寝の危険性を啓発してから、SIDSで亡くなる乳幼児は大幅に減少


こども家庭庁では、毎年11月1日~30日を乳幼児突然死症候群(SIDS)の対策強化月間と定めて、ポスターやリーフレットを作成して、SIDSの予防を呼びかけています。

SIDSは兆候や既往歴がないのに、元気だった乳幼児が突然、寝ている間に亡くなる原因不明の病気です。窒息などの事故とは異なります。またSIDSで亡くなる子は、生後2カ月~6カ月ごろに多く、まれに1歳以上で発症することもあります。
こども家庭庁の発表では、2024年にSIDSで亡くなった乳幼児は51名にのぼっていて、乳児期の死亡原因では第4位となっています。

「SIDSで亡くなった乳幼児は、
2017年 77名
2018年 61名
2019年 78名
2020年 95名
2021年 81名
2022年 47名
2023年 48名
2024年 51名
の推移となっています。

1996年、1997年には、SIDSで年間500名以上の乳幼児が亡くなっていました。SIDSで亡くなる乳幼児が減った背景には、1990年代初めから諸外国で、うつぶせ寝禁止キャンペーンが始まり、日本も後を追うようにして“乳幼児のうつぶせ寝は危険”と啓発活動を行ったためです。
それを機に日本でも、SIDSで亡くなる乳幼児は減少して、2002年からは年間200人台、2005年からは年間100人台に減っています。うつぶせ寝は、SIDSの大きな危険因子です。そのため1歳になるまでは、どの子もあお向けで寝かせましょう」(山中先生)

うつぶせ寝は危険というと「寝ている間、ずっと横で見守っていないとダメなの?」と思うママやパパもいるかもしれませんが、山中先生は過度に心配する必要はないと言います。

「SIDS のリスクを減らすために大切なのは、寝つくときにあお向け寝で寝かせてあげることです。ずっとそばで見守るのは無理なので、その必要はありません。ただし寝返りをしたときに窒息しないような就寝環境作りは必要です」(山中先生)

またSIDSは冬に発症しやすい傾向があるといわれています。

「寒くなると、赤ちゃんに厚着をさせたり、布団をかけてあたため過ぎたりするのが、SIDSと関係があるのではないかともいわれています。しかし何度以上になることが危険なのかなどを裏づける、エビデンス(科学的根拠)はありません。
SIDSは前述の通り、うつぶせで寝かせるなどいくつかの危険因子はわかっています。海外でも研究が進んでおり、ノルウェーやデンマーク、スウェーデンでは2500g未満で生まれた低出生体重児、早産、子宮内発育遅延も危険因子であり、これらとうつぶせ寝が組み合わさると危険率が高まるという報告もあります。しかし、はっきりした原因はわかっていません」(山中先生)


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