たまひよ

隈本納実さんには5歳になる息子がいます。息子には発達障害があり、おむつに手を入れておちんちんを触ったり、おむつの中に排便していればうんちも触ります。自分の便を手で触ってしまったり、手に付いた便を服や壁、床などにすり付けたりすることを「弄便(ろうべん)」と言いますが、隈本さんはその対応に苦労していました。全2回インタビューの前編です。


2歳半になっても言葉が出ず、おむついじりが始まった



――隈本さんは、5年前に7年ぶりの出産をしました。息子さんは、3歳4カ月のときに発達障害と診断されたとのことですが、赤ちゃんのときはどのような様子でしたか?

隈本さん(以下敬称略) 息子は出生体重が3800g超えで、出産した子どもたちの中で一番大きく生まれました。0歳代は、夜泣きが激しかったり、毎月のように高熱を出したり、背中スイッチが敏感という特徴はありましたが、すくすく育っている印象でした。

――発達に不安を感じるようになったのは、いつごろでしたか?

隈本 1歳半ごろです。上の子たちは1歳半には「ママ」「パパ」などの単語が出ていたのに対して、末っ子はまったく出ていなくて、少し気になっていました。1歳半健診でも、言葉が出ていないことから、保健師さんに声をかけられて個別相談に。半年間経過を見ましたが、状況は変わらず、保育園に入園して半年後、2歳半になっても言葉が出なかったので、「この子は発達ゆっくりさんだな」と思うようになりました。

心配だったのは、言葉だけではありませんでした。2歳半ごろから、よくおむつに手を入れて、おちんちんを触るように。保育園では、その対策のために、特別にロンパースを着せてもらうようになりました。つなぎのウエアを着せていればおむつの中に手を入れにくいからです。そのころの私は、時が経てば息子もおちんちんをいじることに飽きて、やめるだろうと思っていました。ところが、おちんちんだけでなく、便も触るようになったんです。

――それは、どういった状況でしょうか?

隈本 たとえば、私が夕食のしたくで忙しくしていると、末っ子がベビーゲートの向こう側で手を気持ち悪そうにプルプル振っていて、かけつけると、息子の手にうんちがベッタリついていて、周辺の壁や床にもうんちがついている…という状況です。
その惨状を最初に見たときは、私もびっくりして、「うんちを触ったら、ばっちいよ!」と大声を出してしまいましたが、「なぜ、うんちを触るの?」と聞いても、息子は言葉が話せないので教えてくれません。そこで、同じようなことをする子どもがいないか、ネットでいろいろな人のブログを読みあさっていると、ぴったりな体験談が見つかりました。そこには、4歳で発語がなく、おむつがはずれていない発達障害のお子さんが、自分のおむつに手を入れてうんちを触るというエピソードが赤裸々に書かれていて、これが「弄便(※)」という行動だと知りました。

息子の場合、言葉が出ないので、うんちが出ても「出たよ」と伝えられません。でも、うんちが出るとおしりが気持ち悪くて触ってしまい、触ると便が手につくので、本人は「なんじゃ、こりゃ?」と、きょとんとしつつ、手が気持ち悪いから壁でふいてみた、床でふいてみた、といった具合なんだということがわかりました。いたずらとかではないんです。

※弄便とは、自分の便を手で触ってしまったり、手についた便を服や壁、床などにすり付けたりする行動で、発達障害や知的障害のある子ども、認知症の高齢者にみられるといわれる。

――本人にその気がないとはいえ、家族としては困ってしまったのでは?

隈本 そうですね。「もう…!」が私の口癖になっていて、小学生の娘に「ママ、モーモー言ってて、牛みたい」と言われています(笑)。家族も、最初のうちは動揺していましたが、ネットの情報によると、しかったり、大きなリアクションをすると、逆効果とのこと。

弄便があったら、淡々と本人の体を洗い、部屋をアルコール除菌するようにしました。高校生と小学生になっていた上の子たちも、「言葉が話せるようになったら、うんちが出たと伝えられるから、弄便をしなくなるんじゃないかな? しゃべれるようになるといいね」と話しながら、部屋の除菌を手伝ってくれました。


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